Kokonoe Green Library
~食で身体を整えて、Libraryで知らない世界へ旅をする~

自然豊かな環境で、読書を楽しむひとときを。
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伏流水が流れ、雄大な山々に囲まれた里山で、自分だけのひと時をお過ごしください。
Bon voyage!

動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか

更新:2019/02/28

里山の暮らしに潤いをもたらす要素って何でしょうか?


大学で推薦図書として紹介を受け、本書を手に取りました。

動的平衡という言葉は、元々、物理学の用語ですが、著者は「生命、自然、環境ーそこに生気する、すべての現象の核心を解くキーワード、それが《動的平衡》(dynamic equilibrium)だと思う。間断なく流れながら、精妙なバランスを保つもの。」と記されています。

"生命"ほど、万人にとって、意識するとせずとに関わらず、身近に存在し、一生を伴走する存在はありません。

大昔から、数多の聖人賢者が、その神秘の性質を解明しようと果敢に挑戦してきた形跡は、今ではwikipediaやAmazonのレコメンドを、軽くサーフィンするだけでも伺い知ることができます。

言い換えれば、これほど、人々の心を鷲掴みにしてきた問題提起は無い、とも表現できます。

だからこそ、思考が鮮明で、身体が元気なうちから、取り組んでいくテーマとしてベストだと感じます。

毎日、楽しく充実した時間を過ごすために、生命観のベースがきっと大切だと思われるからです。

その形成には環境も重要。自然豊かな場所に身を置く選択肢を私たちは取りました。

生命現象は、哲学方面と自然科学方面からアプローチするのでは、一見すると、全く様相が異なります。

この点、筆者の考察は、サイエンスの世界で生きてこられた経験に重きを置きながらも、人間味ある人文科学的な見解を導いてくれています。

文章は、時にヒンヤリするようなシャープさがあるかと思えば、心温まる感情になる時があります。 

農業と食に携わる私としては、様々なヒントと学びがあったことは言うまでもなく、里山暮らしや伝統食・郷土食、食することの意義深さにも、改めて気づかされました。

私たちは「We are what we eat.(私たちは食べるもので出来ている)」という古くから伝わる指針を、カフェや民泊でお出しする食事と、日々の自分達が食するものにおいて、大切にしているのですが、本書でもこの点が言及されていました。

骨を調べれば食物がわかる

You are what you ate.

「汝とは、汝の食べた物そのものである」

こんな諺が西洋にある。食べ物の種類、つまり食環境が私たち生物のありように大きな影響を与えることを指している。もちろん、この指摘は正しいのだけれど、それは文学的な比喩として的確であるという意味だけではない。生物学的にきわめて正確な表現でもある。

私たちの身体は、たとえどんな細部であっても、それを構成するものは元をたどると食物に由来する元素なのだ。

実際、私たちの身体を調べると、私たちが何を食べているかがわかる。生命が失われても、身体の一部ー例えば骨が残っていれば、生前の食生活を垣間見ることができる。食環境の痕跡は長い年月を経ても残ることになるのである。

生命現象の探求というと何やら難しく感じる人も多いと思いますが、まずは身近な食を考えることからもスタートできます。

そして、生命現象の構造の理解が進むに従い、農と食も視野が広がり、もっと楽しくなってきます。

日常生活にこれまでとは違った新鮮な視点を与えてくれる本書。

宜しければ、一度手に取ってみてください。

(ここのえ店主)

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