Kokonoe Green Library
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Bon voyage!

二宮翁夜話

更新:2019/03/03

恐るべきカンの人・二宮尊徳―天然の理への洞察は超人レベル


農業で何を参考にしているのですか?

と聞かれたら、真っ先に思い浮かぶのが、二宮尊徳が残した数々の著作です。

本書は、それらの中でも、高弟であった福住正兄(ふくずみ まさえ/農政家・実業家)が、尊徳の至言を、夜話という形でまとめたものです。

農業をはじめた頃、あまりにも知識が多岐にわたると感じ、正直、めまいがしました。

植物学・生物学・生態学・微生物学・土壌学・遺伝学・肥料学・栄養学・気象学 etc...

真面目に真っ向から、農業を捉えると、相手が自然なため、対象範囲があらゆる領域に及んでいきます。

そこで、知識の積み上げは、ほどほどにし、自然そのものへの感覚を研ぎ澄ますことを優先し、カンとコツを養うようなスタンスでやってみることにしました。

それから、フィードバックをして、知識を補おう、と。

このような意味で、二宮尊徳ほど農業の感覚を高めてくれる至言を多数残してくれた人物はなかなか見当たりません。

現代の経営者や政治家にもファンが多く、日本が生み出した偉人の代表者のような人物として捉えられている印象もあります。

こういう言葉があります。比較的、有名なフレーズではないかと思います。農業の教訓にもなりますが、暮らし方や仕事においても考えさせられるものがあります。

"翁曰く、夫れ誠の道は、学ばずしておのづから知り、習わずしておのずから覚え、書籍もなく、記録もなく、師匠もなく、而して人々自得して忘れず、是ぞ誠の道の本体なる。渇してのみ、飢えて食ひ、疲れていね、さめて起く、皆此の類なり。古歌に「水鳥のゆくもかへるも跡たえてされども道は忘れざりけり」といへるが如し。"

普通に読めば、サラっといけてしまうのですが、改めて考えると、平凡な出来事の裏の、大変奥深い世界を、よくもこれほどわかりやすい例に置き換えられる、恐ろしいほどのカンの鋭さに身震いします。

農業の良いところは、こうした先人が残した、「なるほど!」と唸らずにいられない、体験から生み出された数々の言葉や考え方を、少しずつ咀嚼しながら、取り組める点かと思います。

とは言え、実際の忙しいシーズンや大量の事務仕事をこなさないといけない時、こんな余裕な心境でいられない現実もあります。

ところで、近年、若い人達の間でも、農業や食を二十四節気との関連で捉えようという風潮が強まっている気がします。

特に、地方に移住し、里山暮らしを実践する人達との会話では、自然と二十四節気の話題になることが多く、古くからの知恵を大切にしたい気持ちのあらわれなのかもしれません。

農聖の尊徳に至っても、農業に生かすべき知恵として二十四節気を記しています。

"地上に於ける万の生物は、天地自然のままに生存しているが、人類は人類の必要なる植物を選び、これを作物として作るやうにしたのであるから、各作物の種を蒔いたり、苗を植えたりする時期は、それぞれ天地自然の季節に従ってなさねばならぬ。しかし気候風土は、所によって異なるので、同一の作物に於ても、種薪の時季には遅速を生じる。それ故よく調べて各地方に適する時に行ふべきである。"

▼以下の図は「二宮尊徳全集 生活原理篇」から。

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自然を観ずるフレームワークを増やしていくことは、アプローチとしても面白いと感じています。

二宮尊徳の書籍はそういう意味では、金言と知恵の宝庫です。

ご興味があれば、手にとってみてください。

(ここのえ店主)

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